概要

本ウェブサイトは、COVID-19が芸能や我々の芸能理解に与えた影響について考える研究プロジェクト「『コロナ状況』下で育まれる芸能―危機への応答・身体性をめぐる交渉・社会との関係」（科研費基盤研究B）の活動の様子と成果を紹介するものです。新型コロナウィルスはがもたらすのは必ずしも「禍」だけではないという認識から、「コロナ禍」ではなく「コロナ状況」という語を使っています。

研究の目的

新型コロナ感染のパンデミックは、世界各地の芸能に多様な形で影響を及ぼしてきた。ウイルスの存在を前提として生きる「コロナ状況」は、芸能（音楽、舞踊、演劇）の上演と伝承の在り方をどのように変えたのか／変えているのか。また、この非常事態のなかで通常とは異なる様相を見せる芸能の動態を検討することで、我々の芸能や、芸能を実践する身体についての理解をどのように更新してゆけるのだろうか。 本研究グループはこの二つの問いについて主に東アジアおよび東南アジア地域を対象に検討する。いわゆる「伝統芸能」に重点をおきつつ、それ以外のジャンルや地域にも適宜目を配りながら、比較を交えて考察する。文化人類学、舞踊学、民族音楽学、音楽史学、文化行政、そして映像製作の専門家が共同研究を行い、地域や芸能ジャンルを超え、学際的に議論する。特に（A）コロナ状況という危機に応答する新たな表現や上演（B）感染防止のために生み出される新たな上演や伝承のありかたと、そこでの芸能の身体性に関する葛藤や交渉（C）コロナ状況下で問い直される芸能と社会との関係、の3つの側面に着目する。

A）コロナ状況という危機に応答する新たな表現や上演

芸能は天災や疫病など、様々なハザードやリスクに対する人間からの応答の一つの形でもある。この機能は、今回どのように果たされたのだろうか。また、感染症との対峙の経験は芸能の中でどのように表現されたのか。厄除け祈願の上演、感染防止啓発における芸能の活用、ウイルスのある日常を盛り込んだ芸能表現等を分析し、感染症と芸能のダイナミックな関係を論じる。なお、SARSの流行や東日本大震災など、過去の災害下での芸能の状況は重要な参照点となると考える。

B）感染防止のために生み出される新たな上演や伝承のありかたと、そこでの芸能の集団性や身体性や場所性に関する葛藤や交渉

移動や他者との身体的交流が制限されるなか、芸能家たちがあみだす新しい上演や伝承の方法に注目し、それらが芸能にもたらす影響について明らかにする。「ホーム」のなかで調達可能な人・モノを用いたブリコラージュ的上演、オンライン空間等の活用による新しい制作や上演や伝承の形、感染予防対策を盛り込んだ対面での上演方法等が検討対象となる。また、教育機関での取り組みも重要な注目点となる。これらの実践や現場を検討しながら、芸能の集団性、身体性、場所性はどのように意識され、交渉され、変化しつつあるのか考察する。

C）コロナ状況下で問い直される芸能と社会との関係

一見「不要不急」のようにみえる芸能活動は、それぞれの社会において、どの程度禁止や制限や自粛の対象となったのか。また芸能家たちはいかに補償の対象になり、彼らはそれどのように応答したのか。そして社会における芸能や芸能家の役割についてどのような議論がなされたのか。感染拡大という事態を受けて、浮き上がる社会と芸能の関係について考察する。

メンバー

●は科研費分担者、それ以外は研究協力者

科研費

科研費基盤研究（B）「『コロナ状況』下で育まれる芸能―危機への応答・身体性をめぐる交渉・社会との関係」

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AA研共同利用・共同研究課題

本研究は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所（AA研）の共同利用・共同研究課題の以下のプロジェクトと連動しています。

新型コロナ感染拡大下における芸能に関する学際的研究

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